「楽譜通りに弾けるようになったけれど、なんだか演奏が平坦に聞こえる……」
子どものピアノを聴いていて、そんなふうに感じたことはありませんか?
音もリズムも間違っていない。
強弱もしっかりついている。
それなのに、どこか全部同じような音に聞こえる。
今回は、子どものレッスンで「表現力」をどのように身につけていくのかについてお話しします。
表現力は、どうやって身につける?
ピアノを始めたばかりの頃は、まず楽譜を正しく読んで、正しく演奏することが大切です。
音を間違えない。
リズムを間違えない。
楽譜に書いてあることをきちんと演奏する。
最初はそれで十分です。でも、正しく弾けるようになったら、その先があります。
それが、
「私はどんな音を出したいんだろう?」 「この曲をどんなふうに演奏したいんだろう?」
と考えることです。
表現力は、ただ「もっと表情をつけて」と言われて身につくものではありません。
音を聴いて、考えて、実際に弾いてみる。
その繰り返しの中で、少しずつ身についていきます。
「pだから小さく、fだから大きく」だけではない
例えば、楽譜にp(ピアノ)と書いてあれば小さく、f(フォルテ)と書いてあれば大きく弾く。
これは間違いではありません。
むしろ、楽譜に書いてあることをきちんと理解して演奏するために、とても大切なことです。ただ、そこから先に進むためには、それだけでは足りません。
「小さく」と書いてあったら、どんな小さな音にするのか。
「大きく」と書いてあったら、どんな大きな音にするのか。
同じpでも、柔らかい音なのか、少し緊張感のある音なのか。
同じfでも、力強い音なのか、華やかな音なのか。
「強い・弱い」だけではなく、音そのものを考えることが、表現につながっていきます。
音と音のつながりを聴く
表現を考えるときには、1つ1つの音だけを見るのではなく、音と音のつながりも大切です。
例えばスラー。
「スラーがついているから、音をつなげて弾く」
もちろん、それも大切です。でも、それだけではありません。
そのフレーズはどこに向かっているのか。
どの音を大切にしたいのか。
どこで少し息をするように音楽が変わるのか。
楽譜を見ながら、音楽の流れを考えていきます。
和音の響きも聴いてみる
一つの音だけではなく、和音になったときの響きにも耳を向けます。
「この和音、どんな感じがする?」
「この音を少し聴かせたらどうなる?」
同じ和音でも、どの音を意識するかによって、聴こえ方は変わります。
楽譜に書かれている音をただ順番に弾くのではなく、音が重なったときの響きを聴く。
これも表現力を育てる大切な練習です。
スタッカート=ただ短くだけではない
スタッカートが出てきたら、「短く弾く」と考えることが多いと思います。
もちろん、それも基本です。
でも、
鋭く弾きたいのか。 軽やかに弾きたいのか。
によって、同じスタッカートでも音の表情は変わります。
「記号の意味を覚えて、その通りに弾く」から一歩進んで、
「この音楽には、どんな音が合うんだろう?」
と考えてみる。
それが表現につながっていきます。
実は、昔の私もそうでした
私自身も、昔は楽譜に書いてあることをきちんと守って弾くことが中心でした。
pなら小さく。
fなら大きく。
スタッカートなら短く。
もちろん、それは間違いではありません。
でも、「こんな音を出したい」「こんな演奏がしたい」と考えるようになってから、音楽の見え方が変わっていきました。
ただ正しく弾くのではなく、
「自分はどう弾きたいのか」
を考える。
それが、演奏を一段階先へ進めてくれるのだと思います。
表現力は「考えること」から始まる
表現力というと、特別な才能やセンスが必要なものだと思われるかもしれません。
でも、私はまず**「考えること」から始まる**と思っています。
「この音はどんな音にしたい?」
「ここはどんな雰囲気にしたい?」
「このフレーズはどこに向かっている?」
「この曲を、自分はどんなふうに聴いてほしい?」
そんなことを考えながら弾いていく。
そして、実際に弾いてみて、自分の音を聴いてみる。
思っていた音になっているかな?
もう少し柔らかくしたいな。
ここはもっと軽やかにしたいな。
そうやって、聴く・考える・弾くを繰り返すことで、少しずつ自分の演奏を作れるようになっていきます。
また、家族や講師と一緒に演奏する連弾も、相手の音を聴きながら一つの音楽を作る経験になります。ご家族との連弾については、こちらの記事でご紹介しています。
正しく弾けるようになった、その先にあるのが「表現」です。
Mikikoピアノ教室では、楽譜通りに演奏することだけではなく、自分の耳で音を聴き、自分で考え、自分なりの音楽を作っていくことも大切にしています。

